ぜーはーと軽く息を切らしてる私にやっと口を開く気になったようだ。

「部活サボったんだよ。んで家についたらこいつがいなくなってるから捜してた」

「…なんでそんな、はぁ」
本当に端的な言葉しか述べない彼に何か言いたくなるが言っても意味がない気がしてきてやめる。

「そっちこそ、何でこんなとこいんの?いつも帰る方向あっちじゃなかったけ?」
「それは……ん?」
答える前に彼の言った言葉に少しの疑問が浮かぶ。
何も言わなくった私に彗は小首を傾げる。

「…何で私の家の方向知ってるの??」
「あー」

どんな反応だそれは、と何だかホラー展開のようで頭を抱えたくなる。ストーカー…とかそんな言葉が頭をよぎるがすぐになくなる。彼がそんな事をする類でもないのは知っているし私にする意味もない。

他の理由だとすると、と考えていると彼が口を開く。
「俺、帰る方向同じだから。想乃が気付いてないだけね」

彼の言葉に目を見開く。もちろん帰る方向が同じという事には驚きだがもっと驚いてしまった事があった。
名前だ。今日も確か保健室では私のことを"日南"と苗字で呼んでいた気がするが急な名前呼びに戸惑ってしまう。

当本人は平然としていて何も考えてないような表情をしているけれど。
もしかしてこう見えて思ったよりもパーソナルスペースが狭かったりするタイプなのだろうか?
本人に聞こうかと迷ったけれどやめておこう。何だか深読みしても「いや、別に何も意図はない」と言われたら恥ずかしい。

「そっか、彗って家この辺だったんだね」
「うん。それでさっきの返事は?」

彼の言葉に疑問が浮かぶがすぐに思い出す。私が何で帰らずにここにいるのか。正直に話すのは何だかおかしいと思い咄嗟に違う答えを考える。

「ほら、たまには寄り道とかいいかなーって…思って」
我ながら嘘が下手だと自覚はある。

「へー寄り道ね。そっか」
何だか彼の視線がチクチクと刺さるように感じるが考えるのはやめておこう。だって仕方ないじゃないか。
急にそこまで仲良くもない人に家庭の事情を話すなんて引かれるだけだと分かっている。
唯にすら家のことは言ってないのだ。