六月

「梅雨はいつ明けるのでしょうか。」
 アナウンサーが天気予報士に質問する。
 窓は暗く、リビングに雨音がよく響く。
「奈央、凪起こしといてくれへん?」
「ええよ。」
 俺は二階、弟の凪の部屋へと向かう。
「朝だよ、起きな。」
 弟は、え一っと言いながら起き上がった。
 弟の部屋の時計を見ると、あと十五分で学校へ行かなければ。
 慌ててリュックを背負いドアを開ける。
「行ってくる!」
「わあっ!?よっ吉岡?びっくりしたぁ。」
 危ない、危うく自転車にぶつかるとこだった。
「なっ、涼真、自転車乗せてくれない?」
「代わりに帰る時俺の用事に付き合ってくれよなっ!!」
 俺は自転車に乗り二人で学校ヘ向かう。
 

 はあ~間に合った。助かった。
「ねえ、奈央。漢字のワーク出してよ。」
 あ、早苗。山根早苗。彼女とは、彼女と俺の親が仲良かったから、昔からよく遊んでいた。物心ついた時から、気付けば好きに、なってた。初恋の子。
「ほい、漢字のワーク。」 
「これから気を付けてよ?」
 なんて可愛いのだろう。ツンとした顔が良い。
 俺はしばらく彼女を見つめていた。