最寄り駅までの道を二人で歩く。その道中でずっと気になっていた事を聞いてみた。

「ねぇそれってやっぱり、動きやすい?」

「うーん、やっぱり手動に比べたら動きやすいかな。でもやっぱり、できるものなら自分力で動きたいけど。みんなにとって普通のことも、自分にとっては特別な事だから。」

 私は少し聞いたことを後悔した、いつものキラキラした表情が、ほんの少しだけ曇った気がしたから。

「ごめん......聞いちゃいけないこと、聞いたみたい......」

「いーよ、もう慣れたから。」
 
 でも、そう言う隼人君の表情は曇ったままだった。いつも、笑顔が絶えない隼人君の初めて見る表情だった。
 そこから駅に着くまで、私たちは何も話さず歩いた。

 ✱✱✱

「はぁ.......。」
 
 家に帰ってからも、口から出るのはため息ばかり。両親は、『ついに咲良にも恋の季節が来たか!』なんて馬鹿にしてくるし......。弟は、『幸せ逃げるよ〜?』なんて言いながら夕食のおかずを横取りされるし.......なんだか今日は夕方から、何も上手くいっていない気がする。

「はぁ、、、」
 
 私は家に帰ってから何度ため息をついただろうか......もう、それも分からないほど、何度もため息をついた。
 ひとつ分かることは.......このため息が、恋のため息では無いこと。明日が来ることが憂鬱に思えて出るため息だということだけ。

「どうしよう......。」
 
 明日、隼人君にあったらなんて言おうか......。ちゃんと謝ったところで、隼人君は許してくれるのだろうか。とにかく私の頭の中は明日の不安でいっぱいだ。

「寝よ.....」
 
 私は憂鬱な気持ちのまま目を閉じた。どうか明日が何もない、普通の一日であるようにと願いながら....。