「うわぁぁ.......分かんねぇ〜.....」
 一限から二限の間の休み時間、私の隣の席で頭を抱える男の子が一人......。

 「古文ほんとに分かんねぇ、どうすんのこれ.....」
 
 私と隼人君とはよく、苦手な科目を教えあったりしている。ありがたいことに.....というのか、これは単なる偶然かもしれないけれど私と隼人君の苦手科目は真反対。私は理系科目が苦手てだから、隼人君には教えてもらっている。
 隼人君が苦手な文系科目は私が教えているけれど、かなり苦手なのかいつも一問解いただけでヘトヘトになっている。

「んあぁ〜疲れた......ねぇ、次まで時間あるし飲み物買いに行こうよ」
 
 この暑さで、家から持ってきた飲み物ももうほぼ無い。天気予報では【危険な暑さ】というワードが何度も繰り返し伝えられるようなそんな気温だ。

「いいよ、行こう。途中で押しては無しだからね?」
 
 私が冗談っぽいく言うと隼人君は『今日はしっかりバッテリー充電してあるから大丈夫だよ。』と笑顔で答える。

「今日は私、オレンジにしよっかな〜」

「んじゃ俺もそうしよ〜、おそろ〜い!」

 最近の会話は、ずっとこんな感じだけど嫌な感じはしない 、多分これは私が隼人君のことを、特別だと思っているから.......。
 これを隼人君が知ったらどう思うだろうか?
 私は隼人くんと会話をしながら、頭の中でこんな事をぐるぐると考えていた。

 ✱✱✱

 一日の日程が全て終わって下校する時間になった。夏期講習は受けている人が少ないから、人混みが苦手な私でも身構えなくよくて、学期期間中よりも楽な気がする。

 「おーい、咲良ちゃんっ、かえろ〜?」
 私がぼーっとしながら昇降口に向かって歩いていると、後ろからものすごいスピードで何かが近づいてくる。

「うわっ、びっくりした......隼人君かぁ.....てかそれ、どのくらいスピード出るの?」

「んーっと、時速2.5キロ?」

「うおぉ....思ったより速い......怪我しないように気をつけよ〜っと。」

「何その、事故る前提みたいな言い方〜.....」

 隼人君と話すのはとても楽しい、時間なんていくらあっても足りたもんじゃないくらいに。そんな、底抜けに明るい隼人君に私はどんどん惹かれていくんだ。