「よいしょ.......っと。」
 
 八月ももう終わりに近いある日、私は学校に向かっていた。いつもなら、この時期はまだ夏休み。でも高校三年生ともなるとそうもいかない。私は大学受験を控えているから、学校の部活に加えて夏期講習なんかもあったりして余計に忙しい。

 「よし、今日はちょっと早く着けた。」
 
 私は、あまり人の来ない場所に移動して音楽を聴いていた、今日は珍しく最近流行りのアイドルの曲がスマホから流れてきた。

 「ハーピハピ......」
 
 気分よく耳元で流れている歌を口ずさむ、これは早く着けた時の楽しみというか.....私はこの為に早く着けるように頑張ってる面もある。

 「何してんの?」

 「うわっ?!」

 私は音楽に夢中で後ろから近づいて来る人に気が付かなかった。
 私が驚くと、その子はニッコリ笑って『おはよう。』と挨拶をしてくれた。

 「すっごい楽しそうだったじゃん、何聴いてたの?」

 「これ聴いてた、あのさ......隼人(はやと)くん、いつから居たの?」
 
 本当に私は夢中で、全く気づかなかった。私の質問に隼人君は少しニヤッと笑って『ハーピハピって口ずさんでたあたり?』と答えた。かなりはじめの方から見られていたのか.....そう思うとすごく恥ずかしくなる。隼人君はその様子に気づいたのか『可愛いからいいじゃん』なんてもっと恥ずかしくなるようなことを言う。

 「そんなことないから、あっ.....ほらっ!授業始まるから...っ、行くよ!車椅子押さなくていい?」

私がそう聞くと『うん、大丈夫。いつもありがとね。』とニコニコ笑ってそう言ってくれた。