「っ、愛(あい)?」


誰……?


「お前ら、彼女を丁寧に客室へ案内しろ」


…ん?ん!?


「代表取締役!?」


ほら、驚いてますよ!?
知らない人も!

……あれ? 代表取締役て……会社……?
いや、多分一、二歳上だと思う、けど……。


「ほら、早く」


「……」


「俺がやる」


え? えーと、なんかお姫様抱っこで運ばれているんですけど…?


すごく、恥ずかしい…。


というか、なんで……。


顔を隠していると、止まったから、多分着いたのだろう。


公園からどこ行くのっ。

……もういいや。どこに行く宛もないし……。


「愛。覚えてない?」


「えっと、会ったことありましたか……?」


「っ……」


悲壮な顔に歪んだ彼。


折角の彼のイケメンフェイスが勿体無い…。


「……」


「……」


「なら、なんで、知らないやつに付いて行った」


……いや、付いて行ったとかじゃなくて、その……お姫様だっこで運ぶから動けなくて……。

あ、や、他にももちろん、もうどうにでもなれっていうのと、なんだか懐かしい感じがしたからで……その……。


「なー君!
もー!
愛音ちゃんが困っちゃうじゃないの。下ろしなよ〜」


悩んでいたら救世主登場!!


「ん」


下ろしてくれた。


…というか、あれ?


「名前……」


なんで知って……。


「っ、え? あ…何でもないの!」


…本当かなぁ?


「私は伊集院 花莉(いじゅういん はなり)。
よろしくね〜」


「よろしくお願いします」


「敬語抜いて! ほら花莉ちゃんって呼んでみな?」


「……花莉ちゃん」


「ふふっ。
……じゃ、おいとまするね。なーくんとしゃべってて。
……久しぶりの再会だし」


……?
最後、聞こえなかったな。大丈夫、かな?


「……姉貴は早く行け」


「は〜い」


「……なぁ、お前は、俺を知らない……のか?」


知っているかのような口ぶり。


「分かりませんっ……。記憶喪失、なんです」


「っ、すまない……!
……もう、帰っていいぞ」


何が、すまない、なんだろう?