「あんたは、もういらないわ。
出ていって頂戴!!
この『疫病神』が!!!」


「っ……」


住ませてもらっていた身。


もう高校生なんだ。


そう、高校生。


だから、もう、家を出なきゃ。


音があまりにも大きかった。


それで、百合も来た。


「……愛音。行かないでよ」


「百合、あなたまで『疫病神』の味方なの!?!?
信じられないわよ!!」


「そうだけど……何よ!」


百合、もう言わなくていいから……もう、やめてよ……。


「あんたは黙ってなさい!!!!」


平手打ちを、百合が受けた。


なんで? どうして? 最愛の娘でしょう?




そっか、愛情って…脆いもんね。


なんてことをぼーっと考えていたら、
無視していると思われたのか、
怒りがマックスになったのがわかった。


「疫病神はもう出ていきなさい!!」


「お母さん、やめて!」


「百合…」


百合がそんなに叫んでいるの、取り乱しているのは……初めてみた。


私の為……か。


私は愛されたい。
嫌われるのは仕方ないと割り切っているつもりだけれど……もちろん、悲しいし嫌だ。
けど、私の大切な人が傷つくのはもっと嫌。


だから。


「……はい。
出て、行きます………。
だから…百合を…傷付けないで、下さい」


「愛音!」


「百合は黙りなさい!!
そうよ、あんたは今すぐ出ていくのよ!!!」


「愛音……〜〜〜!!!」


百合がこれ程までに悲しんだことが、叫んだことがあっただろうか。


否、無いと断言できる。


ごめんね。
そう、心の中で何度も、何度も唱えながら、
急いで荷造りをして家を出る。


「愛音……! これ、持ってて……!」


「うん……。
ごめんね、百合。さようなら……」


もらったものは……何かが書いてあるだろう紙。


もう、見る気力も無くて、かばんにしまう。


「またね……!」


「……うん」


玄関を出るとおばさんがいた。


「疫病神は今後一切百合に関わらないで頂戴!
もし関わったら、どうなるかしらね!!」


きっと、恐ろしいことになるだろう。


「…はい」


家を出て、近くを彷徨う。


どうしようか。全財産は五千円と少し。


百合が、誕生日に何がほしいか聞いてくれて、いつも布をもらっていた。

それで作ったものをフリーマーケットで売って出来たお金だ。


公園へ向かう。


確か、昔遊んだはず…。記憶の通りに進むと、家を見つけた。


「懐かしいなぁ。
……お母さん、お父さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん。
……みんな……っ、なんで、死んじゃって……」


ああ……あの頃に戻りたいよぉ……。


「百合……ごめんね。ごめんね……」