「あんたこっち来なさい!」


「は、い。おばさん」


次は、何を言われるだろう。されるだろう。
考えたくも、ない。


もう私、葉加瀬愛音(はかせあいね)の心身共に限界を迎えている。


……といっても、もうずいぶん前からだけど。



「あんたはここの掃除をしてなさい!」


地下倉庫の掃除か。


ずっと使っていなかった場所だから、2日あれば終わるかな。


多い、と思うかも知れないけれど…
おばさんはこのくらい丁寧にしなきゃ怒ってしまうから、頑張ろう。


そして、夜。


「以外と、終わったなぁ…」


3分の2ほど終わらせれた。


そして、屋根裏の自分の質素な部屋で就寝した。


「ごめんなさ…お兄ちゃん……。
お姉ちゃ……なんで……連れてかないでっ……。
お父さん、お母さん…やめて……逝かないで……!
お願い、だから……」




朝。


私の朝は4時から始まる。


朝ご飯とお弁当を作って、掃除など諸々の家事を終わらせる。


「愛音」


「う、うん。なに?」


「…私も手伝う」


この子は、いとこの百合(ゆり)。


「ありがとうっ」


ぶっきらぼうだけど、おばさんの目を盗んでは助けてくれる。


「べ、別に、あんたの為じゃないし…」


これがただの照れ隠し、愛情表現だってわかってる。


だから。


「本当にありがと〜っ」


きちんと感謝をして、抱きつくんだ。


百合がいなきゃ私はきっと逃げ出していただろうから。


「もう、そんなじゃ悪い虫が付くわよ」


「えっ! む、虫…」


虫は嫌いだ。


あと、雷と暗いところとおばけもっ。


「大丈夫、愛音が思ってる事ではないわ。
うん、断言したげる」


「そう…?」


なら、大丈夫かな…。


いやいや、虫は全部無理だっ。