「何?」

「あの…っ」

柊真が足を止めて振り返った。
草木に囲まれた神社はどことなく背中がスッキリしなくて。

「もし、本当に寿命を交換したら…私は本当に死ぬの?」

「死ぬよ」

「どうして…?」

人の寿命なんて誰にもわからない、たとえ自分のことでもわからない。

なのにどうしてそんなことが言えるのー…


「オレは病気だから」


色のない瞳だと思っていたのに、どこを見ているのかさえわからない真っ黒な色をしていた。

「死ぬんだよ、もうすぐ…それがいつかって言われたらそれはハッキリ言えないけど神様でも何でもないし」

「……。」

「でも死ぬよ、必ず…」

目を合わせる。

吸い込まれるようで、息が止まりそうで。

「夏休みが明けたらオレはここにない」

夏休み…
今は5月、まだ夏休みまでは少しあるけど…っ

「そんなのすぐじゃん!」

つい声が大きくなってしまった。

だってそんなの冷静に考えられない、3ヶ月ってこと?

3ヶ月の間で死んじゃうってこと…!?

「そうだよ」

「なんでそんなにっ」

落ち着いて言えるの?

3ヶ月ってあと少しだよ、たった3ヶ月…!


「でもっ!」


山中に声が響いた。
ずっとなめらかな声で話していたのに急にドンッと押しのけるみたいな声だった。

ビクッて体が震えて、口が開いたままただ息をゆっくり吸うことしか出来なかった。

「千和は今すぐ死にたいんだよね?」

「…っ、そう…だけど」

サッと目を逸らして足元を見た。

そんなふうに思ってた、けど…
いざ3ヶ月って聞くと妙にリアルな感情が…


今こうして普通に話してるのに?

本当に3か月後には…


「やっぱ嫌になった?交換するの」

「そ、そうゆうわけじゃっ…ないよ」

「じゃあ交換してくれるの?」

「……。」


交換…


本当に、本当にこれで寿命が交換出来るとしたら私は…


俯いたまま小さく深呼吸をした。