「……。」

大きく息を吸って深呼吸する、ずっと開けられなかったドアの前で胸をなでながら。

あれからしばらく会ってないからちょっと緊張する、ここに柊真がいるんだもんね…


いるんだよね?ここに。

いるんだよね…


もしかしてって思いながらここに来なかったのは、本当はただ怖かっただけかもしれない。

どんな顔で会えばいいのか少し怖かった。


もう一度息を吸った。

スッと手を前に出してドアを…

「柊真のお友達?」

ノックしようしたところで花を持った女の人に声をかけられた。えっと、この人は…

「柊真の母です」

柊真のお母さん!?

わ、すごいタイミング!

え、どうしよ!?

やっぱ突然来るのダメだったかな!?

「今なら起きてると思うからどうぞ入って」

えっ… 

戸惑う私をよそにスムーズに案内されてしまった。

やっとノックする気になれたのに急にドアを開けられたから緊張度が増した。お母さんの後ろをついてそろーっと病室の中に入る。

なんだろ、すごいドキドキするんだけど…

「柊真、お友達来てくれたよ」

おっ、お友達って!
そんなお友達(仮)ぐらいなのに、てゆーかここに来てよかったのかもまだ…!?

「は、友達って…」

柊真の声が聞こえる。

だけど、その声に私の方が驚いてしまった。

「…千和?」

目を丸くして私を見る、ベッドの上で仰向けになった状態で。


そんな弱々しい声、してたっけ?


「千和ちゃんって言うのね」

「あ、はいっ!山下千和です…!」

「柊真とは同じ中学?」

「え…」

チラッとベッドで横になる柊真の方を見る。すぐに視線は逸らされてしまったけど。

「…そうです」

柊真はどう思ったかな?

柊真はわかってたんだよね、私と同じ学校だってこと。

「そうなんだ、来てくれてありがとうね。あ、そうだリンゴ食べる?おいしいのもらったの、剝いて来るからちょっと待ってて」

「え、あのっ…お構いなく!」

「柊真、お母さんリンゴ剥いて来るから千和ちゃんとお話してなよ」

え、本当にお構いなく!?

勝手に会いに来ちゃったから、絶対柊真は私が来るなんて思ってなかったし、えっとあの…っ