「千和、…大丈夫?」

「うん、もう大丈夫…ありがとう」

まだお昼にもなってない、今日は学校をサボっちゃったから。

「ごめんね、オレもう行かなきゃいけないから」

「ううん、今日は約束の時間じゃないし」

いつもは学校帰りにここへ来る。
今日は学校へ行きたくなくてここに来ちゃったから。

「なんかあったらまたっ、ってオレスマホ持ってないから~…またここに来て!オレに会いたくなったらここで会おう!!」

「うん…」

スマホなんかなくてもまたここで、そうだねまたすぐ会えるよね。

ばいばいと手を振って柊真が帰って行く、少しさみしいけどまだ永遠の別れじゃないし。


私まだ生きてるし。もう少し…


「……。」

今からどうしようかな。

もう学校へは行く気になれないし、ずっとここにいたいけど…いてもいいのかな?

防波堤で立ったまま海を見つめる。
ここで波の音を聞いてるのは嫌いじゃない。

気持ちが落ち着いて無になれる気がするから。

「…家に学校から電話があったらどうしよう」

…そういえば、どうして柊真は今日ここに来たんだろう?

柊真も学校休んだのかな?

だって今日は平日、普通に学校あるよね…?


―ブーンブーンッ

「!?」


制服のスカートのポケットに入れていたスマホが振動した。使わないくせに入れっぱなしだったから、久しぶりの着信にびっくりしちゃった。

誰だろ、電話って…

恐る恐るポケットからスマホを取り出して画面を確認する。


お母さん…!?


あ、やっぱ学校から電話あったんだ!

やばい、また怒られる…!


ど、どうしよっでもここで出ないのも、なんかなんてゆーかその…っ


「……っ」


バクバクしながら画面をタップした。ゆっくりスマホを耳に近付ける。

「もしもし…お母さん、あのっ」

「千和…?」

いつになく弱弱しい声だった。

「お母さん?」

「千和…っ」

「どうしたの?何かあったの!?」

耳を澄ます。

電話の向こうはしーんとしていて、でも時折吐息が聞こえる。

はぁはぁって、わずかな息が漏れる音…


「助け…て…っ」


「お母さんっ!!?」

電話の向こうからゴトンッと鈍い音が聞こえた。

「お母さん!どうしたの!?」

何、何があったの!?

「お母さん聞こえてる!?ねぇ、お母さんってば!!」

すぐに走り出した、おばあちゃん家まで。

ずっと部屋に引きこもっていたお母さんだから、たぶんそこしかいないと思って防波堤からおばあちゃん家まで全速力で走った。