「ここで死ぬのは難しいと思う」

なのにまだ突っかかって来るとは、なんてメンタル強いんだろこの人。

「は?」

ピクピクって眉毛が動いちゃったじゃん。

「あの建物何かわかる?」

「え、どれ…」

スッと私から視線を変えてちょっと離れた建物を指差した。
防波堤から海沿いを真っ直ぐ行ったところ、大きくて真っ白なガチっとした建物は…

「病院?」

「そう、この辺で1番大きい病院ね!」

それぐらい知ってるけど、だから何なの?

何が言いたいの…?

「例えば君が今ここで飛び込んだとする、それを見ちゃってる僕的には見過ごすわけにはいかないからすぐに助けを呼びに行く」

「……。」

「そして幸い病院はすぐそこ、簡単には死ねないと思うよ?」

じゃあほっといてくれたら1番いいんだけど、私的には見過ごしてくれても全然…

「あ、もし僕が見過ごしたとしてもここはそこそこ田舎だから中学生が飛び込んだなんてなったらすぐわかっちゃうからね!見てあそこ、灯台があるよね?灯台の上から漁港組合の人が海の観察してるから君がここで飛び込んだらすぐわかっちゃうよ」

え、そーなの?
それは知らなかった…

灯台があるなぁとは思ってたけど、あそこって人がいるんだただの観光客向けのやつだと思ってた。

「だから、ここで死ぬのは難しいと思う」

きゅるんとした目で私を見て、うんって説得させられた。

「…教えてくれてありがとう」

私と同じぐらいの背丈、制服は着てないけど制服を見てすぐに西中ってわかったしたぶん同じぐらいの歳だと思う。

でもどうせもう会うことないしいいか。

「次死ぬ時は違うとこで死ぬようにするから安心して」

もう一度靴を履いてリュックを背負う、しょうがない今日はもう帰ろうかな出直しってことで。

死ぬ場所ってやつも考えないといけないんだ、死ぬのもラクじゃないね。