季節はずれの桜の下で


 五十周年記念の文集が配られたのは、学年が上がった四月の始業式だった。

 パラパラとページをめくる指が、あの子の作文のところで止まる。

 唐突に始まる一文目を読んで、それがあのときおれが渡した手紙の返事なんだって気が付いた。

 作文の最後まで目を通して、「はぁー」っとため息がこぼれる。

「目標、遠っ……」

 おもわずつぶやくと、斜め前の席に座るあの子が不思議そうに振り返る。

 ちょっと恥ずかしくて、ほっぺたを引っ張って変な顔をしたら、あの子がふっと笑った。

 まあ、笑ってくれるだけ進歩だよ。なあ、心桜。