あれ? 千葉くん、さっきから黙ったままだけど。もしかして、私の格好が変なのかな?


今日は普段は下ろしたままの髪を巻いて、アップスタイルにして。軽くメイクもしてるから。


「……千葉くん?」

「はっ! ごめん。橘が、いつも以上に可愛くて……つい見とれてた」

「えっ?」


うそ。千葉くんの口から、可愛いって!

聞き間違いじゃないよね?


「その浴衣も、橘の優しい雰囲気にすごく合ってる。可愛いよ」


まさか可愛いって、ストレートに2回も言ってくれるなんて。やばい……聞き間違いじゃなかった。


千葉くんにそんなふうに言ってもらえるなんて。今日、浴衣を着てきて本当に良かった。


浴衣着ようって言ってくれた、香菜に感謝だな。


「あのっ。千葉くんも……す、すごく、かっ、かっこいいよ」


やば。めちゃくちゃ噛んじゃった。


「まじ? 橘にそんなふうに言ってもらえるなんて、嬉しいな。それじゃ行こっか?」

「うん」


私は、千葉くんと並んで歩き出す。


カランコロン と、二人の下駄の音が響く。