それから私は、お母さんに浴衣の着付けをしてもらい、千葉くんとの待ち合わせ場所にいた。
時刻は18時前だというのに、外はまだ明るい。
千葉くん、まだかな?
静かに吹いた夏の風が、浴衣の袖を揺らす。
「橘!」
約束の駅前で少し待っていると、下駄の音を響かせて千葉くんがやって来た。
「……っ」
浴衣姿の千葉くんを目にした瞬間、私は彼に釘付けになる。
黒地に白の縞が入った柄の浴衣は、千葉くんにすごく似合っていて。
初めて見る浴衣姿の千葉くんは、新鮮でかっこいい。和服の千葉くんも素敵だな。
「ごめん、橘。待っ……た?」
千葉くんは私を見た途端、驚いたように目を丸くする。