去年までは、千葉くんのファンの子たちに混ざって、こっそりと部活の様子を見ているだけだったから。
今日は、千葉くんの“友達”として。堂々と彼がサッカーする姿を見られることが嬉しい。
それからしばらくして、他校との練習試合がスタート。
「千葉くん、頑張れー!」
「柊くん、ファイトーッ!」
試合の観戦に来た、ギャラリーの女の子たちの声があちこちから飛び交う。
さっき千葉くんから『応援よろしく』って言われたから。私も、しっかり声援を送らないと。
そう思ったとき。
「春翔くん、その調子ーっ!」
……この声は、杏果ちゃん?
グラウンドでは、千葉くんがパスを受けてドリブルをしているところだった。
私は、真っ直ぐ彼だけを見つめる。
「千葉くん、頑張って」
小さな声で呟くと、最後のディフェンスをかわした千葉くんがボールを蹴り……。
千葉くんのシュートが、見事ゴールネットを揺らした。︎︎︎︎
「やった! 凄いよ、千葉くん〜!」
千葉くんが、この試合で一番最初にシュートを決めたことが嬉しくて。
私は思わず、他の子たちと一緒に飛び跳ねてしまう。
「千葉くん、すごくかっこいい」
ポツリと、小さく呟いたはずなのに。
まるで私の声が届いたみたいに、永倉くんとハイタッチしていた千葉くんがこっちを見た。