サッカー部の複数の女子マネージャーのなかには、去年私と同じクラスだった西野杏果ちゃんって子もいて。


千葉くんに片想いしているという彼女は、千葉くんにおにぎりを食べてもらえて、すごく嬉しそうな顔をしてる。


いいなぁ。


私も杏果ちゃんみたいに、サッカー部のマネージャーだったら良かったのだろうか。


そうしたら、普通に差し入れも渡せて。千葉くんとも、もっと仲良くなれたりしたのかな?


「春翔くーん」


チームメイトと並んでおにぎりを食べる千葉くんのもとに、彼のファンの女の子が何人かやってきた。


女の子に囲まれた千葉くんは、ゼリー飲料や食べ物の差し入れを渡されている。


優しい千葉くんは、断ることなくそれらを全て受け取っていて。


……マネージャーや、ファンの子たちからもらった差し入れがあれば、私のお弁当はもういらないかな。


私は、遠くから千葉くんを見つめる。


今もまだ千葉くんは、ファンの女の子に囲まれていて。

イマドキの、どちらかと言うと自分とは真逆の派手な女の子ばかりいる中で。


千葉くんにお弁当を渡すためにズカズカと、あの輪の中に入っていく勇気なんて……私にはない。


私は、唇を噛みしめる。


自分の出る幕はないと悟った私は、踵を返して歩き出す。