千葉くんの前から立ち去ってしばらくすると、涙がぶわっと溢れてきた。


ここは、学校の廊下なんだから。まだ泣いちゃダメだ。


そう思って、指で何度も目元を拭うけれど。


涙が、次から次へと溢れて止まらない。


私は去年、千葉くんにもうとっくに振られてるのに。


千葉くんに好きな子がいるって知ったくらいで、どうしてこんなにも傷ついてるの?


私が千葉くんに片想いしていたように、千葉くんだって誰かを想っていても不思議じゃない。


それに、私は千葉くんの『友達』なんだから。


千葉くんがさっき『もし橘が悩んでるのなら、話聞くよ』って、私に言ってくれたように。


私も『友達』として、彼の恋を応援しなくちゃいけないのに。


「……っ」


私……まだ全然、千葉くんと『友達』になれていないや。


私は今も、千葉くんのことが好きなんだ。


「バカだな、私」


千葉くんに対して好きだとか、そんな感情がなければ、きっと今こんな想いをしなくてすんだのに──。