千葉くんに、初めてチョコを渡したバレンタインから、またひとつ季節が進んだ。


ホワイトデー、春休みとあっという間に過ぎていき、4月の始業式の日。


今日から高校2年生の私は、朝家を出る前に鏡の前で身だしなみを整える。


新学期初日ということで、いつもは下ろしたままの肩下までの髪を、今日はポニーテールにしてみたんだけど……変じゃないかな?


あとは、ブラウスの襟を整えて。


……うん。これでOK。


「いってきまーす!」


家を出て、バスに揺られて。


どこまでも晴れ渡る空の下。


久しぶりに、バス停から学校までの道を歩く。


道端には、いくつもの黄色いたんぽぽの花。


そして時折ふわりと頬をかすめる風は、冬のときと違って暖かい。


ああ、春なんだと実感する。


春を体で感じながら、ゆっくりと歩いていたはずなのに。あっという間に、学校へと着いてしまった。


校門から校庭のほうへと続く、少し散り始めた桜の花を見ていると、ふと思い出す。


ちょうど1年前の今頃。私は千葉くんとここで出会って、彼に恋をしたことを。


そっか。あれからもう1年になるんだ。