思ったよりもつい、大きな声が出てしまった。


「あれ、橘?」

「おっ、おはよう千葉くん」


こちらを向いた千葉くんに、私は勇気を振り絞って挨拶をする。


「おはよう。どうした?」

「あっ、あのね……」


私は、カバンからチョコを取り出す。


渡すんだ、私……!


自分の震える手を、必死に落ち着かせる。


「これ、千葉くんのために作ったの。先月の始業式の日、私を自転車に乗せてくれたお礼に……よ、良かったら食べて?」


私は、赤いリボンでラッピングした袋を千葉くんに差し出した。


「えっ、まじか。お礼とかそんなの別に良いのに」


そう言いながらも、千葉くんは袋を受け取ってくれた。


無事にチョコを渡せた私は、ホッと胸を撫で下ろす。


お礼というのは建前で、本当は本命チョコだけど。


「橘って、律儀なんだな。サンキュー!」


私の言葉のままに、千葉くんが受け取ってくれて良かった。


チョコを抱えた千葉くんが歩いていくのを見届けながら、私は小さくガッツポーズしたのだった。