「え、友達?」


大きな目をパチパチさせる千葉くんに、私はコクコクと頷く。


ワガママかもしれないけど。


千葉くんの彼女になれないのなら、せめて友達として、少しでも彼の近くにいたいって思ってしまった。


「友達、か……」


ポツリと呟くと、千葉くんは黙り込んでしまう。


もしかして、こんなことを言うのはまずかったかな?


しばしの沈黙に、胸がドキドキと高鳴る。


さっきから千葉くん、ずっと黙ってるってことはもしかして……。


「ダメ……かな?」

「いや。友達なら……良いかな」

「ほっ、ほんとに!?」

「ああ。俺も、橘さんとはこれからも仲良くしたいから」


そう言うと、千葉くんの右手がこちらに伸びてくる。


「それじゃあ、そういうことでよろしく」

「はい。こちらこそ」


私も右手を差し出し、千葉くんと握手をする。


千葉くんの手、大きくて少し熱い。


『男女の友情は成立しない』って、どこかで聞いたことがあるけれど。


私は、これを機に千葉くんとちゃんと“友達”になりたい。


そしていつか、千葉くんへの好きって気持ちとも少しずつお別れできたら良いなって思う。


だから、そのときが来るまでは……もう少しこのままキミを想い続けることを許してください。


──高校1年の3学期初日。


私は、千葉くんと友達として新たなスタートを切った。