「いつも部活の応援に来てくれてる子だっていうのは、分かってるけど……俺、橘さんのことは正直よく知らなくて」

「そう、だよね」


千葉くんが、そう言うのも無理はない。


だって、千葉くんと私は別のクラスで。


同じ小中学校の出身でもなければ、特別仲が良いってこともないのだから。


私がただ、一方的に好きだっただけ。


「ほんと、ごめん」

「ううん。別に、付き合えるとか思ってた訳じゃないから……っ」


私は、こぼれそうになる涙を堪えて無理やり言い切った。


はじめから、勝算があったわけじゃない。


私はただ、部活の応援に行って。彼にスポーツドリンクを渡していただけだもん。


ダメ元での告白だったから、こうなることは最初から分かっていたはずなのに。


いざ振られてみると、やっぱり辛いなあ。


「千葉くんに自分の気持ちを伝えられて、スッキリした」


そう言いながらも、視界が涙でどんどんぼやけていく。


ああ。どうか、まだ流れないで……。


「今日は、急に呼び出してしまってごめんなさい。それじゃあ、失礼します」


千葉くんの顔も見ずにそれだけ言うと、私は逃げるようにその場から歩き出す。