杏果ちゃんの言葉に、胸がドクンと鳴る。


杏果ちゃんみたいな可愛い子も、千葉くんのことが好きなんだ。

ていうか、千葉くんのことを“春翔くん”って呼ぶってことは、仲が良いのかな?


「ねえ美桜、聞いた? 今の西野さんの話」


同じく杏果ちゃんたちの会話を聞いていたらしい香菜が、私の耳元で話しかけてくる。


ちなみに西野とは、杏果ちゃんの苗字。


「西野さんって、千葉くんと仲良さげに話してるところを最近よく見かけるから。これは、もしかしたら……あるかもね?」


香菜の言葉に、胸が跳ねる。


「千葉くんって、毎日女の子に告白されてるみたいだし。美桜ものんびりしてたら、そのうち誰かに千葉くんを取られちゃうかもよ?」


今まで千葉くんが誰かの彼氏になるかもしれないなんて、考えたこともなかったけど。


「美桜は、ずっとこのまま千葉くんのことを見てるだけで良いの?」

「……っ」


確かに。千葉くんが誰かのものになるところを、私はただこうして黙って見ているだけで……本当に良いのかな。


「まあ、告白なんて焦ってするものじゃないし。想いを伝えるも伝えまいも、美桜の自由だけど。あたしから、ひとつだけ言っておく」

「なに?」

「美桜、何事も後悔だけはしないようにね? 千葉くんに彼女が出来てから後悔したって、遅いんだから」