えっ。春くんが、私を好きって……。


後ろから私を抱きしめる春くんの腕に、力がこもる。


「本当はずっと、美桜が好きだったのに。何度も振ってしまってごめん。前から友達だったけど、今まで知らないフリをして。嘘をついてて本当にごめん」

「知らないフリ……」


言われてみれば、高校で初めて春くんに会ったときも、私を知ってる素振りなんて全く見せていなかった。

私が最初に告白したときも『橘のこと、よく知らない』って言ってたっけ。


「でも、どうしてそんな嘘なんか」

「小学生のあのとき、そもそもは俺が会いたいって言ったせいで、美桜は事故に遭った。それで、美桜は……死にそうなくらいの大怪我を負って、記憶までなくしてしまった」


違う。あの事故は、決して春くんのせいじゃない。


私は、首を何度も横にふる。


「だから、そんな疫病神の俺が……美桜の友達や恋人でいる資格なんてないと思った。俺と一緒にいるせいで、もしまた美桜を不幸にさせてしまったらって思うと怖かった」


春くんの声が、わずかに震える。


「それで、ある日美桜が俺のことを忘れてるって人づてに聞いて。高校で最初に会ったときは、初対面のフリをしたんだ。美桜と関わらないようにするために……」


まさかあのときの事故に、春くんがここまで責任を感じていたなんて。


春くんの私への告白は、切ないほどに胸を締めつける。