私が春くんのベッド上に頭をのせ、わんわん泣きながら声をあげていると。
誰かに、頭をそっと撫でられる感触がした。
ハッとして俯いていた顔を上げると、眠っていたはずの春くんが目を開けてこちらを見ていた。
「なあ、美桜……なんで泣いてるんだよ」
「うそ、春く……っ」
「もしかして、どこか痛い?」
「っうう……」
目覚めた直後だというのに、相変わらず私の心配をしてくれる優しい春くんに、また涙が溢れだす。
病院の桜の木の葉っぱが、赤や黄色に色づきだした頃。
春くんは事故から1ヶ月ぶりに、ようやく目覚めたのだった。