それからしばらくして、オペ室の赤いランプが消えた。


オペ室から出てきた男性医師に、駆け寄る春くんのご両親。


「先生、息子は……」

「大丈夫です。手術は、無事に成功しましたよ」

「ありがとうございます、先生……!」


良かった。春くん、助かったんだ。


ホッとしたら、急に目頭が熱くなって。涙が溢れて止まらなくなる。


良かった、本当に良かった。


しかし、安心したのも束の間。


オペ室から病室へと戻った春くんは、それから1週間が経っても目を覚ますことはなかった。


頭に包帯を巻いているけど、そこまで深い傷ではないってお医者さんは言ってた。


それなのに……どうして?


事故から10日後。退院した私は、放課後や休日など、できるだけ毎日病院へ春くんのお見舞いに通っている。


「春くん。今日学校で香菜と永倉くんと、春くんが退院したら、皆で遊園地に行きたいねって話してたんだ」


私は、ベッドで眠っている春くんに話しかける。


「香菜と永倉くん、体育祭の日に両想いになったんだけど。それからは、すっごく仲が良くて。二人が幸せそうなところ、春くんにも見て欲しいよ」