「え? なんで、キミが謝るの?」

「なんでって……」

「俺は感心してたんだ。キミ、すげーよ。あっという間に怪我の手当してくれて。ほんと、凄い」


まさか、ほんの少し手当したくらいでこんなにも褒めてくれるなんて。


だけど……良かった。迷惑って思われていたわけじゃなかったんだ。


「そっ、そうかな? 私、幼い頃は外でしょっちゅう転んで怪我してたから。お母さんが、傷の手当をしてくれるのをそばで見てて自然と覚えたっていうか」


私は照れくさくなって、人差し指で頬を掻く。


「へぇーっ、そうだったんだ。肘、手当してくれてありがとな」


千葉くんが、にっこりと微笑む。


太陽のような眩しい笑顔に、思わず目を閉じてしまいそうになる。


「それじゃあ俺、今度こそ部活戻るわ」

「うん。部活、頑張ってね?」

「おう! じゃあな」


千葉くんはひらひらと爽やかに手を振ると、グラウンドへと向かって走って行く。


ああ、まただ。

この前みたいに、さっきからずっと胸のドキドキがおさまらない。


千葉くんの笑顔も頭から離れないし、何なんだろうこれは……。


苦しいくらいに高鳴る胸を、私は制服の上からぎゅっと強く押さえた。