──私には昔、大好きな男の子がいた。


小学2年生の頃。内気でおとなしかった私は、よく同じクラスの男子にいじめられていた。


ツインテールの毛先を手で掴まれ、思いきり引っ張られたり。物をどこかに隠されたり。


この日の学校の帰り道でも、私はいじめっ子に絡まれていた。


『ねえ、坂本くん。返してよぉ』

『やーだね。返して欲しけりゃ、自分で取り返してみろよ』


そう言って私のお気に入りのキーホルダーを、私の手が届かない高いところまで持ちあげる坂本くん。


坂本くんよりも背の低い私は、どれだけ頑張ってもキーホルダーに手が届くことはなくて。


坂本くんや取り巻きの男子たちに、ゲラゲラと笑われるだけ。


『うっ、うう』


自分では取り返すこともできず、私がひとりで泣いていたそのとき……。