その途端、ヘッドライトの強い光に照らされてそちらに目をやると。

猛スピードで、車がこちらへと走ってきていた。


「嘘……!」


よけなければと思うのに、足はその場に張り付いたかのように動かない。


キキーー!!


大きなブレーキ音がしたけれど、大雨のなかでスリップをしたのか車は止まらず、そのままこちらに突っ込んで来る。


やだ、千葉くんーー!


思わず彼の顔を思い浮かべ、目をギュッと閉じたときだった。


「美桜ーーっ!!」


なぜかいつもの『橘』ではなく、『美桜』と私の名前を呼ぶ千葉くんの声がした。


ドン!!


それと同時に体に強い衝撃が走り、アスファルトの地面に倒れ込んでいく感覚がする。


ああ、そうだ。確か以前にも、今みたいに同じようなことがあった気がする……。


倒れていくなかで、ふとそんなことを思いながら、私は意識を失った──。