私が、そっと視線を下にやったとき。


「おはよう、美桜ちゃん!」


登校してきた永倉くんが、元気よく私に声をかけてくれた。


「永倉くん、おはよう」

「あのさ、美桜ちゃん。悪いけど……今日はよろしく頼むよ」

「あっ、うん。アレね。任せて!」


実は今日、永倉くんは香菜に告白するつもりらしい。


それで、今日の体育祭が終わったら何かしらの理由をつけて、私に香菜を呼び出して欲しいんだそう。


「いざ告白する日になると、めっちゃ緊張する〜。俺、昨日あまり寝れなかったもん」

「分かる。私も千葉くんに告白したとき、そうだった」


花火大会の日に、お互いの恋を応援すると宣言した私たちは、たまに恋愛相談をする仲になっていた。


「美桜ちゃんは? 今日、春翔に気持ち伝えんの?」

「あー、私はもう振られてるから。特に何もしないかな」


さすがに同じ人に二度も振られるのは、辛いから。


「そっか。もし、俺に何か協力できることがあれば、いつでも言ってくれよな?」

「ありがとう」

「あっ、そうだ。ねえ、美桜ちゃん」


永倉くんの唇が、そっと私の耳元へと近づく。