それからも練習は毎日続き、ついに体育祭前日の放課後となった。


「橘、お疲れ!」

「お疲れ様、千葉くん」

「隣……いい?」


水分補給も兼ねて私がグラウンドの隅に座って休憩していると、隣に千葉くんが腰掛けた。


「いよいよ明日かぁ、体育祭」

「……そうだね」


バトンパスに不安のある私は正直、明日がちょっぴり憂鬱だったりもする。


「あのさ。俺、ずっと前から思ってたんだけど。橘ってえらいよな」

「えっ?」


千葉くんが突然、そんなことを口にした。


え!? えらいって、私の一体どこが?!


訳が分からず、私は千葉くんに首を傾げる。


「いや、橘って走るのきっと苦手だろうに。自分から立候補して、リレーのメンバーになるなんてさ」

「そっ、そんなことないよ。千葉くんも、立候補したんだから一緒だよ」


私は千葉くんに、ブンブンと手を何度も横にふる。


「俺は、橘がリレーのメンバーになったから。一緒にやりたいなって思って、手をあげただけ」