「あんまり面白くなかったね」
「そう? 俺はそれなりに楽しめたけど」

 但し映画の内容は半分くらい覚えていない。

「ほんとに? あたしにはよくわからなかった」
「わざわざ来た甲斐はあったくらいには面白かったけどな」
「そっか。空夜が楽しめたのなら良かった」

 愛美はそう言って柔らかく微笑む。

「ありがとう。本当はすごく淋しかったから、空夜が来てくれて嬉しかった」
「ま、暇だったし。何かあったら呼び出せって言ったの俺だしな」
「うん、ありがとう……」
「で、この後どうすんの?」

 もうとっくに零時は越えていて終電は終わっている。
 愛美は少しだけ言いにくそうにもじもじしていた。

「うち、来る?」
「っ、」

 愛美は僅かに悩んでいるのか目が泳いでいる。あるいは悩んでいるフリなのかもしれない。

「……行ってもいい?」

 上目遣いで見つめる彼女は天然なのか計算なのか。
 どちらにせよ、空夜の心を惑わせてくる。