ふわっと甘い香りが鼻をくすぐった。



「玉露くんっ……」



 まさに論争の発端である苹果が、こちらに駆けてきたのだ。


 そうなればもう封筒争いはどうでもいい。パッと手に取って懐に忍ばせる。

 空いた手で苹果の肩を掴んだ。



「苹果、いいところに来た。玉露は俺と苹果がデートすることを止めないらしい」

「へっ!? な、なんで……!?」



 あー……甘い香り。

 苹果はすぐ焦るので、少量の汗でも匂いが濃くなってありがたい。

 風味だけでも充分堪能できるというものだ。



「苹果ちゃん、なんで来たの? 待っててって言ったはずだけど……」

「あっ、それなんだけどね、やっぱり玉露くんだけお礼を言いに行くのはおかしいんじゃないかなって……ごめん、来ちゃった」

「……そっか」