彼女は、玉露くんのお母さん。

 ──わたしは彼女に、嫌われている。



 たぶん最初のきっかけは、彼女の作った料理を酷評したからだ。

 そこから気に障る行動を重ね、減点方式に嫌われていったんだろう。


 わたしと玉露くんが仲良くするのを止めてくることはないけど、顔を合わせれば良い反応はしてくれない。

 明らかに避けられてるんだよね……。

 だからわたし達も、彼女に合わせて立ち回っていて……。



 明かりが一つも灯っていない自分の家を見上げる。

 玉露くんを失ったら、もう何も残らない。


 ……見捨てられないようにしなきゃ。


 ふう、と息を吐き、家の鍵を開けた。