ぼーっとする頭で目を開ける。

 ……あっ、開けちゃいけないんだった。


 遅れて気付き、腕の中にいる彼を確認して──いない。

 勢いをつけて飛び起きた。


 今、何時っ……!?


 部屋の時計は午後九時に差し掛かっていた。



「早く帰らないとっ……」



 その前に、玉露くんがどこにいるのか知っておきたい。部屋にはいないから、キッチンで夕食を作っている可能性が高い。

 廊下に出ると香ばしさが鼻をくすぐった。

 走ってリビングのドアを開けたら、料理をお皿に盛り付ける玉露くんを発見。



「あの、玉露くんっ……!」

「苹果ちゃん、おはよう」



 様子はすっかりいつも通りだった。

 いや、今はそこまで気を配れる余裕がない。