ベッドに近付き、布団の山に手を置く。

 熱が下がったとはいえ、まだ病人。平気そうに見えるだけなんだ。まだどこか辛いところがあって、不安な気持ちになってるんじゃないかな。

 顔に全然出してくれない玉露くんが見せてくれた弱いところ、見逃さない。



「ね、もう一回言ってくれたら、布団の中でもいいよ」

「…………言うつもりなかったから、いい」

「でも聞いちゃったよ……?」



 記憶に残り続けるから、取り消しは受け付けられないよ。

 布団の中から手が出てきたから、そっと取った。



「……御鏡、那由多」

「え?」

「良い人だね……あの先輩」



 ど……どうしたんだろう、突然。

 でも今回はたくさんお世話になった。玉露くんも、印象が覆ってきてるのかな。