目を開いた先で飛び込んできた、男子が男子を抱える姿。
あまり背の変わらない玉露くんのことを、御鏡先輩はあっさりと横抱きしている。
「保健室、連れて行ってやるから苹果も来い。心配だろ?」
「あっ……はい!」
廊下へスタスタ歩く背中を追いかけた。
意識が朦朧としてぐったりしている玉露くんの顔は青白い。
もっと早く、玉露くんの不調に気付けてたら……。
「運んでくださってありがとうございます、御鏡先輩……」
わたしは玉露くん一人にたくさん助けられてきたのに、わたし一人じゃ玉露くんを助けられないんだなぁって実感した。
……情けない。
だんだんと肩を落としていくわたしを見て、御鏡先輩はふっと笑う。
「じゃあ、礼はデートで返してくれ」
「えっ」
下がっていく気分の前に立ちはだかった、突飛な案。