熱があったなんてわからなかった。

 顔に全然出てないし、今の今まで普通に受け答えしてくれてたから。

 って、そんなことより!



「保健室に連れていかないとっ……」



 脇の下に手を滑らせて持ち上げてみる。

 びくともしない。


 焦りを募らせるわたしに、とろんとした目がスライドした。



「……苹果ちゃん?」

「……! よかった、意識が、」



 戻ってくれ……た?


 玉露くんは、いきなり立ち上がったかと思えば。

 ふら~っと、わたしの方へ倒れてきて……。

 スローモーションみたいに見えたけど、実際の時間は一瞬だ。


 あ、これ。押し潰される、って確信した。

 反射的に目を瞑る。



「……っと、確かにすごい熱だな」



 ……だけど大惨事はやって来なかった。