ぎっ、ギリギリセーフ……!


 ダッシュで図書室に戻ったところ、玉露くんはまだいなかった。

 息を整えながら奥まで歩き、着席する。

 図書室は暖房が付いていたけど、走ってきたから暑いくらいだ。


 さっきまで本を読んでましたよ感を演出するため、近くの本棚から適当に抜き出す。

 開いて目で文章を追うけど、全く頭には入ってこない。

 他のことですでに頭を埋め尽くされているから。


 ケーキとしてキスで食べられたり、皮膚をぺろっとされたりすれば御鏡先輩と恋人になれるって。

 よく考えればものすごーく、好条件なんじゃないかな……!?


 いや、それで絶対に血肉を求められないと言い切れないのが怖いところなんだよね。

 そもそも御鏡先輩を好きかって聞かれると、そういうわけでもないような。……一瞬吊り橋効果に引っ掛かりそうになっただけで。