使用人さんが車の後部ドアを開けると、足を組んで座る御鏡先輩が見えた。
「那由多様。白亜様がいらっしゃいました」
「……苹果?」
それまでぼんやりとしていた先輩の目が、丸くなってわたしに気付く。
ぺこりと会釈したら、柔らかい笑顔で外まで出てきてくれた。
「なんだ? 俺のものになる準備ができたのか」
「いやっ、そういうわけじゃなくて……!」
激しく首を振る。
「すみませんでしたっ!」
その勢いで、バッと頭を下げた。
「味が感じないのと不味く感じるのを同じみたいに言ってしまって、よく考えたら……いやよく考えなくても! すごく軽はずみで最低な発言だったなと……、不快にさせたと思います! すみません!」