わたし、このままこの人に食べられちゃうのかな。
将来の夢とかはまだ考え中だけど、自分が未来どうなってるのかとかは、楽しみだったんだけどな。
勝手に進む自分の足を見ていたら、視界が涙の膜を張った。
「御鏡 那由多」
「……え」
「俺の名前」
思わず顔を上げた先で、気まずそうに表情を歪めた先輩が顔だけ振り向かせている。
なんで、急に……名前?
「泣くのはやめてくれ。甘い匂いがして食べたくなる」
「ひっ! ……た、食べないで」
「食べない。俺だって犯罪者にはなりたくない」
引っ張られてない方の手で涙を拭う。
確かに、昨日のように有無を言わさないスピードで襲ってくる気配はない。
今なら話し合いができるかも……。