「あの~、玉露くん?」

「うん。後は自分で食べてね」

「うぅ……」



 なるべく舌に触れないようにしてみるけど、口の構造上まぁまぁ不可能なので自滅。

 にがーい風味が口の中を充満するから、すぐにお茶で流し込む。

 これも『苦い』っていう味があるからいけないんだ。



「はあ……こんな辛い思いするなら、フォークになりたいよ、」



 軽い気持ちで口にした言葉だった。



「──苹果ちゃん」



 咎める視線に射抜かれる。

 フラットな中にも穏やさを内包したいつもの玉露くんは微塵も姿を見せてくれない。

 本当に良くないことを発してしまったのだと、体が固くなった。



「もしも苹果ちゃんの親がリンゴを嫌いだったら、苹果ちゃんの名前は違うものだったかもしれないね」

「あ……」

「僕の名前もそう」