「そ、そう。その人が……」

「うん」

「わたしの、こと…………」



 また一瞬言い淀む。

 そしたら玉露くんは繊細な手つきで頭を撫でてくれて。

 この優しさは本物だって。言葉を吐き出した。



「甘いって、首を舐めて……『おまえがケーキか』って……」



 玉露くんの手が止まる。

 やっぱり驚くよね……。


 いつフォークに食べられててもおかしくないんだ。まだ生きてるのがすごいことなんだよ。



「頑張って逃げて来たんだけどっ……、どうしても気持ち悪くて、忘れたくて……」

「どこ?」


「え……?」

「どこ舐めたって?」



 頭の上にあった手が滑り落ち、首の後ろまで移動する。



「玉露くん……?」

「僕も舐めたことなんてないのにね……」



 声の抑揚がない。

 たったそれだけなのに雰囲気が変に感じる。