せっかく前を向けたのに、さっと顔を背けてしまった。

 あ、あれ。なんだろう。うまく、顔が見られないな……。


 握り拳の中にすら、ドクドク脈打つ鼓動が伝わる。

 意識してる、だけ、……だよね?



「つ、剣先輩っ、よろしくお願いしますっ!」



 大きな声で自分の鼓動をかき消すため、勢いだけで乗りきってみようとした。



「お、やる気あるな。早速今日から始めるか」

「え」


「はい。よろしくお願いいたします、白亜様」

「え、え」



 まさかそれが自分の首を絞めることになろうとは。


 車の進路が変わる。

 いつもの景色から知らない道へ。



「が……頑張ります……」



 わたしは、覚悟を決めることにした。