うぬぼれてるみたいで口に出せなかったけど、表情には出てたようだ。

 全部察してくれた那由多先輩が、わたしの背中を叩く。



「俺は、苹果が玉露のことで悲しんでる時間を与えたくないだけだ。前向きに行動する気があるなら協力する」



 とん、と那由多先輩の手が背中で弾んだ瞬間、背筋が伸びて周囲が明るく見え始めた。

 いつの間にか、猫背になってたんだ。

 下ばかり向いて、気分も暗くなってた。



「わたし……、もう一回、玉露くんと話し合いたいですっ……!」



 今度こそぶつかりたい。

 砕け散って瓦礫(がれき)しか残らなかったとしても、それなら受け入れられる。



「あぁ。……頑張れ、苹果」



 柔らかく笑う那由多先輩が視界に入った。

 とびきり優しくてとびきり甘くて──胸が、ぎゅうっと締め付けられるような感覚がして。