今度は、明確な理由で迷いがあった。
なぜわたしが料理を勉強してるのかというと、作ってくれる存在がいなくなったからだ。
玉子焼きは、消費した卵の数を覚えてないくらい練習して形だけなら上手く調整できるようになった。ので、今度は味に手を出していこうと考えている。
こればかりはレシピ通りに作ってもダメだった。
卵を溶いて、調味料を入れて、焼く。たったこれだけの作業なのに。
一口食べた瞬間から、わたしが求めているのはこれじゃないと脳が訴えるのだ。
その味が基準にある以上、わたしのためを思って提案してくれた那由多先輩に不義理なんじゃないかな。
玉露くんのことを考えないで料理した日なんか、ないんだもん……。