あの日から、少しずつ。

 少しずつ、少しずつ。玉露くんとの時間が減っていった。




「よ。おはよう苹果」



 玄関から外に出て最初に見る顔。

 おはよう、と挨拶してくれる声。


 それらも、玉露くんじゃなくなるときがきた。



「……なんで。なゆた、せんぱい」

「玉露に頼まれた。車乗れ」



 代わりに増えた、那由多先輩との時間。

 玉露くんがそうなるように仕組んでいるなんて一目瞭然だったけど。

 こんなわかりやすいと……落ち込む。



「……おじゃまします」



 那由多先輩の車に乗り込む。

 落ち着かない柔らかさにお尻を預けた。


 油断したら泣きそうだ。

 那由多先輩の前では泣かないと決めたから、なんとか止まれている。