「ぎょくろくんママのごはん、おいしくない!」



 昔のわたしは、よく癇癪を起こしていた。

 わざわざ他人の分まで用意してくれた料理を無茶苦茶に酷評したのも、その一つ。



「……そうかな、ぼくはそう思わないけど」

「りんごのママはもっとおいしいごはん作ってくれる!」

「じゃあ今度食べさせてよ」

「むり! 帰ってこないもん!」



 親となかなか会えない憤りを当たり散らしていたんだと思う。

 周囲に気を遣うなんて概念もなかったから、自分の思い通りにならないことへの怒りが止まらなかった。



「ぼくのお母さんは帰ってこなくても、こうやってご飯作っててくれるよ?」

「っ──! 知らない! とにかくおいしくない! おいしくないのっ!!」



 バンバン! とテーブルを叩くと、食器が踊る。

 玉露くんがやめさせるためにわたしの腕を掴んだ。