玉露くんのお母さんは、那由多先輩のことよく知らないと思うし……。



「御鏡先輩には今度謝っとくよ。母さんに口止めもしとく」

「そう、だね」



 正直に言えば、那由多先輩は許してくれるだろう。



「『那由多先輩』の話はそれだけ?」

「……」



 『他に言うことあるよね?』……そう言われている。


 バカなわたしでも、ようやく彼の心が見えてきた。


 当たり前だよ。

 なんとも思わないわけ、ないじゃん。


 玉露くんは隠してくれてたんだ。わたしが那由多先輩に悪い感情を持ってないってわかったから。

 合わせようとしてくれたんだ。

 わたしも同じことをしようとしたけど、玉露くんの方が隠すのが上手くて、わたしの理解度も足りなかった。


 変わったのは、玉露くんじゃない。わたしだけだ。