“ケーキ”が自分を“ケーキ”だと知る方法は一つ。

 “フォーク”に見つかって狙われたときだけ。


 ケーキに出会ったフォークの補食欲は理性をも揺るがすのだとか。

 だからさ、もしかしたらだよ?


 今から、頭から爪先まで、全部、飲み込まれて。わたしは……。

 あ、想像しちゃった。



「っ……や、いやっ!」



 最後の力を振り絞る。

 火事場の馬鹿力っていうのかな。全体重で彼を突き飛ばし、一目散に逃げ出した。


 わたしがケーキ?

 嘘だ、うそだうそだっ……。


 風を受け止める顔の皮膚が痛い。

 喉も傷付いてる気がして、体育のマラソン練習を思い出す。

 周りの景色が今までにないほど早く動いていた。



 そんな──冬を感じ始める十一月。

 全ての始まり。